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Netflixはイギリス、Youtubeはモンゴル

ついにVPNサービスを使い始めた。

契約したのは「Surfshark」という、ネットの海をサメの如く縦横無尽に泳ぎ回れそうなサービスである。

使用目的は2つある。ひとつは、海外のNetflixでは配信されているが、日本国内では配信されていない作品を視聴することだ。

Netflixを利用し始めてずいぶん経つのだが、見たい作品がことごとく日本国内では見られない仕様になっている現状は残念でならない。

例えば、アメリカの人気ドラマ『フレンズ』。コロナ禍の混沌の中でこのアメリカン・シットコムに耽溺し、全話視聴した私は、「またそのうち見返そう」などと軽口を叩いていた。

だが、気づいたときには日本国内での配信が終了していた。なんということだ。あの愉快な愛すべき6人のアメリカ人たちはどこへ行ってしまったのか。

『ダウントン・アビー』もまた然り。イギリス貴族の生活を描いた珠玉のドラマであり、上流階級のposhな発音に憧れを抱く私にとって、これ以上ない英語学習の教材になり得る作品である。

しかしこれまた、肝心の日本のNetflixでは取り扱っていないというのだから、まったくもって腑に落ちない。

そして極めつけは、スタジオジブリ。日本が世界に誇る至宝でありながら、その配信は日本では制限され、海外では惜しみなく開放されているという謎現象である。

なぜ日本でジブリを観るために、わざわざイギリスの仮面を被らねばならぬのか。これでは我が国は文化の本家にして辺境である。

そんなこんなで、私はVPNを通じ、海外の仮想空間からNetflixに忍び込むという、ちょっとした諜報員のような暮らしを始めたのである。

もうひとつの使用目的は、Youtubeを広告なしで視聴することである。

Youtubeは広告が多すぎる。BBCニュースを見ようとすれば、「不動産投資で人生逆転」などと叫ぶ男が現れ、ワンピースの考察動画を見ようとすれば、「副業で月100万円」などと囁く美女が出てくる。もはや私の視界は欲望のカタログと化していた。

だが、世界は広い。世の中にはネット広告を法律で禁止している国があり、VPNでその国のサーバーからYoutubeにアクセスすると、Youtubeプレミアムを契約せずとも、動画を広告なしで視聴できてしまうのだ。

Youtubeプレミアムは現在月額1,280円、対してSurfsharkをはじめとしたVPNサービスは月額だいたい300円~500円台なので、費用的にも断然お得である。

私はYoutubeプレミアムを1か月間無料トライアルで利用していたのだが、無料期間が終了するタイミングで解約し、意を決してSurfsharkを利用開始した。

現在Netflixを見る際はイギリスの、Youtubeを見る際はモンゴルのサーバーを経由している。サーバーをいちいち切り替えるのは若干面倒ではあるが、得られる恩恵に比べれば微細な手間である。

ダウントン・アビーも問題なく視聴できており、英国貴族のあまりにも格式高いアクセントを聴いて毎日昇天しかけている。

それから、現在読んでいる小説版『海がきこえる』を読み終えたら、次はアニメ版を数十年ぶりに見てみよう。

もちろん、いずれこれらの技も見破られ、VPNが弾かれる日が来るかもしれない。しかし、それまではこの小さな叛逆の愉悦に身を委ねようと思う。